ナマコ

刻々旬々・能登の美味しい魚介[冬]

身近だけど不思議な

マナマコ

文豪 夏目漱石は著書「我輩は猫である」の中、
「始めて海鼠を食ひだせる人は其胆力に於て敬すべく、
始めて河豚を喫せる漢は其勇気に於て重んずべし」と
彼への手紙を引用したほど海鼠のグロテスクな姿や感触は、強烈で印象的です。
古くから、滋養強壮薬、皮膚病薬などの漢方薬としても用いられ、
中国語でなまこを指す「海参」は、その強壮作用から
「海の人参(朝鮮人参)」との意味で名前がつけられました。
一方、英語では、形がキュウリに似ていることから
SEA CUCUMBERと呼ばれていますが、
食材として扱われることはないようです。
海鼠の腸を塩辛にした高級食材「このわた」は日本三大珍味としても知られています。
今回は能登内海の特産でもある「なまこ」の生態を探ってみました。

マナマコの秘密

 敵から襲われたとき、熱帯に棲むナマコの多くは「キュビエ器官と」いう白く粘り気のある糸のような組織を肛門から吐き出します。
 このねばねばするキュビエ器官が敵にまとわりつくことで攻撃を防ぐのです。
 しかし、マナマコにはこの「キュビエ器官」がありません。そこでマナマコは何と腸を肛門や口から吐き出し、敵がそれを食べている間に逃げるのです。ですが、心配はご無用。マナマコは再生力が強いため、吐き出された腸は1〜3ヵ月で元に戻ります。
 また、再生するのは腸だけではなく、体を真ん中から2つに切っても、それぞれが独立した個体として再生することさえあるといいます。
 ただし、いくら再生力が強いとはいえ生存率が低くなってしまうことから、例えば1匹を切断して2匹に増やすというような虫の良すぎる養殖方法は無理のようです。

マナマコの歴史

 ナマコは昔から日本人にとって馴染みのある存在だったようです。古事記の中には、猿田彦命という神様が海の生き物達を集めて忠誠を誓うように命令したのですが、口の無いナマコだけが返事をしなかったので、猿田彦命の妻とされる天宇受売命という神様が怒って、ナマコの口を刀で切って作ったというエピソードがあります。
 干ナマコは昔から珍重されていたようで、古代の法令である養老律令や延喜式の中には租税の一つとして記述されていますし、江戸時代に記された「本朝食鑑」という日本全国の食物を集めた図鑑にも食べ方や効能が紹介されていました。
 また、江戸時代には干ナマコは干アワビやフカヒレと並んで「俵物三品」と呼ばれ、清国への重要な輸出品でした。現在の中国でも日本産の干ナマコは高級品として扱われています。

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