ナマコ

マナマコの形態

 マナマコを含めナマコの仲間は全て海に棲んでおり、淡水や河口のような気水域には生息しません。ナマコの仲間は世界に約1,500種いて、日本にはその中の約200種が分布しています。ただし、食用になるのはマナマコなど約30種程度です。
 ナマコはウニやヒトデと同じ棘皮動物の仲間で、無脊椎動物としては大きく成長します。マナマコの寿命は約10年ほどで、大きいものは体長30㎝くらいになりますが、市場に生の状態で出回るものは体長10㎝前後のものが多いようです。
 雄と雌の区別がありますが、繁殖期に精巣や卵巣が大きくなった状態でも肉眼で判別することは難しい、と言われています。
 マナマコの身体は細長い円筒状で、一端に口、反対側の端に肛門があります。背面や側面には円錐状の疣足が不規則に並んでいます。ただ疣足と名前がついていても、これを使って移動することはありません。移動するときは、歩帯と呼ばれる腹側に3列に並んだ管足を使って、ゆっくりと海底を這います。この管足の先には吸盤状のものがあり、岩に身体を固定できます。
 口の周りには管足が変形した触手が冠状に生えており、その触手を使って海底に積もった微生物の死骸などの有機物を集めて食べています。
 無脊椎動物であるマナマコに骨格はありませんが、体壁の真皮の中には色々な形をした石灰質の骨片がたくさん散らばっています。この骨片は顕微鏡で見ないとわからないほど小さいため、「微小骨片」と呼ばれます。

 マナマコを握ったりして刺激を与えると硬くなるのは、体を縮めることで微小骨片の密度が高まるためです。この硬さが変わる体組織は「キャッチ結合組織」と呼ばれ、場面に応じて様々に変化します。
 熱帯に棲むシカクナマコの仲間には、手で握るとまず体を硬くし、次にキュビエ器官を放出し、それでも逃げられないと判断すると指の間からドロドロと溶け落ちるほど体を柔らかくするものがいます。これも特殊な結合組織の産物ですが、不思議な生き物もいるものです。

マナマコの栄養

 マナマコは、中国では朝鮮人参と同じくらいの薬効があるとされ、「海参(ハイシェン)=海の人参」と呼ばれています。漢方薬としては、生で食べると腎機能の強化や解熱など、加熱して食べると肝機能の強化や増血・血行促進、強精に役立つとされています。
 体の9割以上を水分が占め、100g中のタンパク質は4・6g程度。また100g中のカロリーは
Kcal、コレステロールが1㎎、脂質も0・3gと低いため、大変ヘルシーな食材です。
 しかし、カルシウムなどのミネラル成分は比較的多く含んでいるものの、ビタミン類やアミノ酸などはイカやカニなどと比べても少なく、栄養成分的に特筆されるものはありません。
 干ナマコにすると旨味が増すのは、干すことで身肉に含まれるグリシンなどのアミノ酸が濃縮することと、肉中に存在する酵素によってタンパク質が分解されてアミノ酸が増加するためと推測されています。
 身肉にはコラーゲンを含んでいますが、これを口から摂取して健康や美容にもたらす効果については、科学的に十分証明されているわけではありません。
 コラーゲンはもともと生物の体組織中に普通に存在するものですから、効能を気にするよりも「マナマコの食感の素はこれなんだ!」と食感を楽しむほうがよいでしょう。
 また、一部のナマコは内臓にホロスリンという毒素を持っていますが、マナマコにはこの毒素がないため、安心して食べることができます。

マナマコの目利き

 マナマコは、棲んでいる場所によって体色が違います。背が栗色と褐色が混ざり合い、腹が赤いアカナマコ(アカコ)、背が暗青緑色で、腹が黄から青色をしたアオナマコ(アオコ)、背も腹も黒いクロナマコ(クロコ)の3つの型があります。
 アカナマコは主に外洋の岩礁や転石帯に生息し、アオナマコやクロナマコは内湾の砂泥底に多く棲んでいます。
 これら3種類は同じ種類として分類されていますが、前に書いたように生息域が違うほか、餌や体の特徴、習性などで少しずつ違いがあることから、最近では分類学上、別種や亜種として扱った方がよいのではないかという意見もあるようです。
 関東地方では身に弾力があって柔らかいアオナマコ、関西地方ではコリコリとした食感が強いアカナマコに人気があります。クロナマコは身が固いため、生食よりも干ナマコとして加工することが多いようです。
 マナマコは冬季の冷たい水温を好み、10℃〜18℃の水温で餌を食べるなどの行動が活発になります。しかし初夏を過ぎて水温が上がってくるとだんだんと動きが鈍くなり、水温が25℃以上になると岩礁や転石の下などの暗い場所で夏眠に入ってしまいます。ただ、年間を通して水温の低い北海道では、夏眠をしないマナマコもいるそうです。
 夏眠の間はマナマコは餌を一切食べずにじっとしており、秋になって水温が下がり出すと、夏眠から覚めて再び活発に動くようになるのです。
 この夏眠期間はちょうど禁漁期間にあたり、ナマコ漁が解禁になる秋以降からマナマコの身入りもよくなってきます。解禁後すぐよりも冬が近づいて水温がぐっと下がるころがマナマコの旬で、「冬至ナマコ」と呼ばれることもあります。

 生きたマナマコが店頭に並ぶときは、たいてい海水と一緒に袋詰めされているため、なかなか鮮度がわかりにくいものです。ですが、袋の外からでも鮮度の良いマナマコを選ぶコツがあります。
 体が太く短く締まっているもの、体の色がはっきりしているもの、皮に張りがあって疣足がはっきりしているものを選ぶと、鮮度が良く美味しく食べられます。逆に体の表面が溶けたようになっていたり、くたっとしているものは鮮度が落ちています。

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