刻々旬々・能登の美味しい魚介[冬]

冬の味覚の王様

ズワイガニ

タラバガニや毛ガニと並んで、
日本人には馴染み深く、好まれるズワイガニ。
「気をつかう宴会はカニを食べに行け、
カニを剥くのに夢中で会話が弾まなくても白けない」
という笑い話もあるほどです。
日本海で水揚げされる地物だけでなく、
ロシアやアラスカ、北朝鮮からも輸入されています。
しっかり入ったその身にはたっぷりと甘味を含み、
茹でて良し、蒸して良し、焼いて良し、鍋にしても勿論良し。
刺身として提供されることも多くなりました。
晩秋、日本海が荒れ始める11月を迎えると
富山県以西の日本海ではズワイガニ漁が解禁になり、
あちこちの港は活気にあふれます。
それでは冬の味覚を代表するズワイガニについて探ってみましょう。

楚蟹/ズワイガニ

ズワイガニは、日本海側、特に北陸から山陰地方にかけての冬を代表する味覚であり、ズワイガニ属の中で最も高値で取引されています。ズワイは楚(すわえ)と書き、「すわえ」が訛って「ズワイ」となったようです。楚は、木の枝や幹から細長く伸びた若い小枝のことをいい、ズワイガニの細長い脚が、小枝を連想させたのでしょう。体はやや平たく、甲は円みを帯びた三角形で、生きている時の体色は紫褐色です。長い脚を使って海底をゆっくり移動し、泳ぐことは全くできません。

雌は石川県ではコウバコガニと呼ばれ、雄の半分ほどの大きさです。脚身は少なく、甲の内側に「内子(うちこ)」と呼ばれる未成熟卵、腹部に「外子(そとこ)」と呼ばれる成熟卵を抱えています。ズワイガニは底引網漁で獲られますが、乱獲や混獲などにより漁獲量は年々減少しています。そのためコンクリートブロックを沈めて保護区を作ったり、底引網漁の操業禁止区域を設けるなど、漁獲量を増やす試みが行われています。

ズワイガニの秘密

ズワイガニをはじめとした甲殻類の殻からは、近年、健康サプリメントとしてよく耳にするグルコサミンやキチン、キトサンといった物質ができます。ただ、甲殻類由来のサプリメントには、カニ・エビアレルギーを引き起こすトロポミオシンというタンパク質が含まれている可能性があるため、カニ・エビアレルギーを持っている方は注意が必要と言われています。

また、甲殻はアスタキサンチンという色素がタンパク質と結びついています。茹でたり焼いたりして熱を加えることで、アスタキサンチンがタンパク質から分離して、ズワイガニはおなじみの赤色になるのです。このアスタキサンチンは、病気や老化の原因となる活性酸素に対して高い抗酸化作用を持つと言われ注目されていますが、人での有効性については信頼できるデータが見当たらないのが現状です。