刻々旬々・能登の美味しい魚介[夏]

お馴染み、なのに馴染み薄?

アイナメ

アイナメ、と聞くと子供の頃を思い出します。
放課後や休日になると釣り竿を担いで家の近くの磯へと走り、
その辺で捕まえた小さな貝やカニをエサに釣り糸を垂らす。
子供の力ではそう遠くに仕掛けを飛ばすことはできませんが、
岸近くの岩場に潜むアイナメを狙うには充分でした。
小さなアイナメしか釣れませんでしたが、その手応えにワクワクさせられ、
日が暮れそうになるまで何度も何度も釣り竿を振っていました。
ところがこのアイナメ、釣りではよく見る魚にもかかわらず
近所の魚屋さんではほとんど見かけることがなかったため、
「大人はあまり好きじゃないのかな?」と不思議に思ったものです。
そんなノスタルジーとともにアイナメのあれこれを探ってみました。

アイナメの形態

アイナメはカサゴやメバルなどと同じカサゴ目に属する魚。近い仲間にはウサギアイナメ やエゾアイナメ 、クジメ 、スジアイナメがいます。居酒屋でお馴染みのホッケも近い仲間ですが、アイナメはホッケのように群れをつくることはなく単独で生息します。

ちょっと太めの紡錘形をした体には浮き袋がなく、一つに繋がった背びれと大きく丸い胸びれがよく目立ちます。全長は普通20〜30㎝ほどですが、中には60㎝を超えるものもいます。

水深1~30m程度の海藻が茂った浅い岩礁帯でごく普通に見られ、岩の隙間を好んで棲むため、消波ブロックなどを恰好の住処にしています。エサとして主に食べるのはカニやエビのような甲殻類の他、ゴカイや小さな魚など。アイナメは行動範囲が狭く、住処からあまり動くことはないのですが、エサが住処に近づくとすばやく飛びついてくわえ込んだり、岩についているエサをつついて食べます。

艶やかな体表にはまだら模様があり、棲んでいる場所によって黄褐色や紫褐色などの様々な色をしています。魚の体表には側線(そくせん)と呼ばれる水流の変化や振動、音響などを感じ取るセンサーがあります。写真では分かりづらいのですが、実物のアイナメをよく見るとこの側線が体側中央だけでなく背びれ、腹びれ、尻びれの根元に計5本もあります。ただ、実際に機能している側線は中央の1本だけであるため、見かけほど敏感な魚ではないようです。

ちなみに、アイナメには「ヘキサグラモス・オオタキイ」という学名がつけられています。「オオタキイ」は命名者のジョルダン・田中・スナイダー氏が研究に協力した大瀧圭之助氏への感謝としてつけたものですが、「ヘキサグラモス」は「6本の側線」を意味します。…数え間違えてしまったのでしょうかね?