刻々旬々・能登の美味しい魚介[冬]

ストライプ模様の賢い魚

イシダイ

一部の水族館では、
見慣れないものをつついてみる
イシダイの習性を利用して
お魚ショーを行っています。
口を使って器用に紐を引っ張る様子は
実に可愛らしいと人気です。
ショーを休止している場合もありますので、
水族館の公式ホームページなどを確認してから
遊びに行きましょう。
ちなみにこのイシダイですが、
闘争心が強いため
他の魚と一緒に飼育するのは難しいそうですよ。

イシダイの形態

イシダイといえば白黒の縞模様(しまもよう)がトレードマークですよね。でも実はこの模様、若い時期だけの特徴なのです。成長すると薄くなって消えてしまうことはご存知でしょうか?正確にはオスのイシダイは成長すると縞模様がなくなっていきます。メスは完全に消えることはなく縞模様は残っているので、大人のイシダイの雌雄は簡単に見分けられるでしょう。この模様から、イシダイのことをシマダイと呼ぶ地方もあります。また、狂言の演目「三番叟(さんばそう)」で使われる衣装に似ていることから、サンバソウと呼ぶ地域もあります。

では、大人になって縞模様が消えたイシダイのオスはどんな姿になるのでしょうか。老成したイシダイは吻部(ふんぶ)(口の先)が黒くなり、クチグロと呼ばれるようになります。出世魚というわけではないですが、イシダイも成長すると呼び名が変わる魚なのです。

イシダイの口元

他にもイシダイには特徴的な部位があります。それは口です。おちょぼ口のように突き出ていて小さいです。そして歯は一本一本生えているのではなく、全てがくっついて一つの歯のようになっています。そのため上下合わせて鳥のくちばしのような形になっています。イシダイの歯はとても頑丈で、貝類・甲殻類・ウニなどをバリバリと噛み砕いて食べます。エサに合わせて歯が進化したのでしょうか。ともあれうっかりイシダイに手を出して噛まれないように注意しましょう。

というのも、実はイシダイ(特に幼魚)は好奇心が強く、ダイバーの後を付いて泳いだり、磯遊びをしている人間に近づいて突っついてきたりします。それだけを聞くとなんだか人懐こく可愛い感じがしますが、先程述べた通りイシダイの歯は強力ですので、噛まれて怪我をしないように気を付けましょう。体を突っつかれるだけでもチクチクと地味~に痛いのだとか。

同じイシダイ科の魚でイシダイよりも南方系のイシガキダイという魚がいますが、こちらは全身がまだら模様で覆われているため、見間違えることはないでしょう。イシガキダイのオスは成長すると吻部が白くなるため、クチジロと呼ばれています。このイシガキダイとイシダイとの天然交雑種が見られることもあるそうです。その名もイシガキイシダイ……そのまんまですね。ちなみに近畿大学では、かなり昔から交雑種の研究をされていますが、近年ではキンダイという名前で売り出しています。

イシダイの回遊

イシダイは生後1年で全長15cm、2年で20cm、3年で25cm、4年で30cm、5年で35cm、6年で40cmと成長していきます。15~20cmの若魚は沖合いの人工魚礁(じんこうぎょしょう)や防波堤、港の中などの比較的静穏(せいおん)域に棲息(せいそく)し、20~50尾程度の群れで行動することが多いです。成長し成魚になると沿岸の波の荒い岩礁(がんしょう)域の水深50mほどの浅い場所に棲息し、単独で生活をするようになります。イシダイは磯を生活拠点としているため回遊らしい回遊はしません。しかし、30cm以上の成魚は産卵期に1日に15~20kmも南下する産卵回遊を行います。