昭和天皇も魅了された?絶品の味わい

食べるには殻を叩き割って身を取り出すだけですが、ここで注意することが一つ。コナガニシのワタ(内臓)はえぐみや苦味が酷く、とても食べられたものではありません。
毒ではないのでそのまま食べてしまっても健康に問題はないのですが、とにかく強烈な酸味や渋みなどで2〜3時間は舌やのどがバカになってしまいます。
きちんとワタを取り除いたら、足の部分によく塩もみをしてヌメリを取ります。
このようにコナガニシはサザエなどと違って足しか食べるところがないので、歩止まりも悪く手間のかかる食材です。
ただ、きちんと処理すれば絶品の味わいを楽しめる食材で、刺身にするとコリコリとした食感とほのかな甘みやほろ苦さが相まった美味しさが味わえます。

かつて石川県七尾市和倉温泉にて昭和天皇がコナガニシを召された際、あまりの美味しさにおかわりをご所望されたという逸話があり、当地の旅館・加賀屋では「おかわり貝」との別名がついているとか。

寿司だねや酢の物など生で食べることが多いようですが、かき揚げや炊き込み御飯にしても甘みが増して歯ごたえも生とは違ってくるので、こちらもお勧めです。

昭和天皇も魅了された?アカニシのお造り

標準和名の「アカニシ」

標準和名のアカニシ(全国でいう赤螺)

能登でいうアカニシ(コナガニシ)と標準和名のアカニシは違う貝というのは前述しましたが、こちらのアカニシはサザエと大きさが近い巻貝。
しかし、サザエは海藻を食べるのに対し、アカニシはアサリやカキを食べるので「大きさ」と「巻貝であること」以外に共通点はありません。

ただ、かつてはその「大きさ」と「巻貝であること」に目をつけられ、サザエの代用品として「蒸しサザエ」や「サザエの串焼き」などに加工されることがありました。現在では食品表示が厳格になったためにこのようなことはなく、ちゃんと原材料や商品名に「アカニシ」と表示されています。

刺身で食べるアカニシにはサザエのようなコリコリとした食感はありませんが、結構な甘みとサクサクした歯切れの良い食感が味わえます。火を通してもその味が落ちることはないので、できればサザエの代用品ではなく、美味しい食材のアカニシとしてもっと知られて欲しいものです。