アワビの栄養

干しアワビは、干しナマコやフカヒレと並ぶ中華料理の高級食材であり、昔から重要な交易品として中国に輸出されてきました。干しアワビにすると日持ちがするうえに、生にはない旨味や食感が生まれます。中国では干しアワビのことを「乾鮑(ガンパオ)」と呼びますが、その中でも岩手県三陸町吉浜で作られている干しアワビは「吉浜鮑(キッピンパオ)」と呼ばれ、最高級の干しアワビとして大変珍重されています。

干し鮑の煮込み(台湾)

そういえば古くは「アワビを食べると長生きする」と信じられていたために、不老不死の妙薬を求めた秦の始皇帝が日本に部下の除福を差し向けたという伝説もありました。

そんなアワビの旬は夏から秋。生のアワビは独特の歯ごたえが楽しめ、刺身や鮨のタネとしてもお馴染みです。身にはグルタミン酸などのアミノ酸や、甘味を感じさせるタウリンやグリシンなどの成分を多く含んでいます。また、煮たり焼いたりして火を通すと身が軟らかくなり、アワビ特有の旨味を味わえます。生のアワビの身にはコラーゲンが多く含まれているためにコリコリとした固い食感をしているのですが、加熱するとこのコラーゲンがゼラチンに変化するため軟らかくなるのです。そういえばよく「コラーゲンたっぷりの○○鍋でお肌つるつる」のようなキャッチフレーズを見かけますが、前述のようにコラーゲンは熱によってゼラチンに変わります。つまりお菓子のゼリーを食べているようなものなので、あまり過剰な期待はしないようにしましょう。

また、香り高いアワビの肝はそのまま食べる他に、茹でたり、醤油に溶かした「肝醤油」としても楽しめます。ただ、春先のアワビの肝にはピロフェオホルバイドaという物質が蓄積するため、この頃の肝を食べると光過敏症を発症することがありますので少しだけご用心を。変わった食べ方としては、丸ごと擦りおろした生のアワビを、これまた擦りおろした山芋と合わせる「アワビのトロロ」があります。固いアワビを擦りおろすのはとても大変ですが、滋味溢れる珍味として知られています。

そういえば、チリアワビという貝を見かけることもありますが、こちらは本当はアワビの仲間ではなく、南米産のロコ貝という貝です。食感が少しアワビに似ているため、通称としてこのように呼ばれているだけなのでご注意ください。 

アワビの目利き

店頭でアワビを選ぶときは、殻が深く身が盛り上がるように太ったものを選んでください。手に取ったときに身が動いているものがお薦めですが、くれぐれも身の真ん中を押したりして鮮度を確かめることはやめましょう。せっかくのアワビが弱ってしまいますからね。