アカモクの生態と産卵

アカモクは一年生の海藻。秋から冬の間に芽生えると2〜3ヶ月で急激に成長し、長いものでは全長が10mにも及びます。

1月から3月頃になると成熟し、子孫を残すのに必要な生殖器床が形作られます。

この生殖器床は他の葉と違ってすりこぎの棒のような形をしていて、茶色い小枝のように見えます。

アカモクをはじめ一部のホンダワラ科の海藻には、一般的に雄と雌の株があり、雄の生殖器床よりも雌の気胞の方が短くて太いことから区別はつきやすいのですが、繁殖期にはもっと簡単に違いがわかります。

写真提供:のと海洋ふれあいセンター
アカモク雌の卵

それは「花」。繁殖期のホンダワラ科の海藻は海中だけでなく、海面ぎりぎりにも「花」を咲かせます。

この「花」は、万葉集にも「なのりそ(ホンダワラ科の海藻の古い呼び方)の花」と詠まれたように古くから知られているものですが、実は私たちがよく知っている桜やチューリップなどの花とはだいぶ違います。

桜などの花は一年に長くても一週間ほどしか咲いていませんが、ホンダワラ科の海藻の「花」は4月から6月の間、新月と満月によって約半月ごとに起きる大潮のたびに数日見られます。

その「花」に近づいてみると桜などの花とは違い、茶色い小枝のような生殖器床の表面に、透き通った粘液に包まれた小さくて黄色い粒がびっしりとついているのがわかります。

この小さくて黄色い粒は、ホンダワラ科の海藻の卵で大きさは約0.2㎜ほど。まるでタラコスパゲティーのようといえば想像しやすいでしょうか。

写真提供:のと海洋ふれあいセンター
アカモク雌の放卵の様子

そして雌の生殖器床の表面にくっついているその卵たちが、海面すれすれのところで太陽の光を浴びて輝くのが「なのりその花」。

というわけで、「花」が咲いているのが雌の株ということになります。

さて、この卵に雄の生殖器床から放出された精子が受精することで、幼胚と呼ばれるアカモクの赤ちゃんになります。

この幼胚は海底に沈むと周りの岩などにくっついて芽を出し成長を始めるのですが、親のアカモクは卵を産み終える6月頃になると赤褐色になり枯れてしまいます。