刻々旬々・能登の美味しい魚介[春]

祝い魚の春到来

マダイ

雪が融け木々が芽吹きを迎える頃
新入学や婚儀など
おめでたい行事が重なります。
饗する祝いの膳には
必ずといっていいほど鯛がならびます。
華々しい祝いの席に登場するマダイは、
あでやかな色、均整のとれた形、
上品な味の三拍子そろった優れもの。
国内魚類の王様といわれる「マダイ」の
華麗なる姿をご紹介します。

マダイの特徴

マダイは、姿形、味、色と三拍子揃った風格ある海魚の代表。体形は真横から見ると楕円形、正面から見ると平たく側扁しています。

産卵期のマダイの雌は体色も美しく色づき味も格段に良くなり、桜の咲く頃と重なるため桜鯛と呼ばれ人気です。一方、雄は黒ずんだセピア色となり見分けやすくなります。

一見華やかな容姿ですが、流れが速く障害物が多い岩礁域や暗い海底付近に棲むため、頑丈な体が必要となります。
俊敏な行動にふさわしい体形や、強固な棘のある鰭や硬い鱗をまとい、硬く引き締まった筋肉などは生きるために必要な作りといえます。

マダイは、多くの魚にみられるように成熟までは雌雄の判別ができません。若齢魚では雌雄両方の生殖腺を持っているからです。3歳以降になると生息環境により、どちらかの生殖腺が発達し、雄と雌に分かれるのです。

ちなみに、わずかな労力で大きな利益を得るたとえを「エビで鯛を釣る」といいます。
事実エビはマダイなどの釣り餌として用いられています。
しかもエビはマダイの色、味に大きな関わりがあります。マダイの赤い体色は、大好物のエビやカニなどに含まれるアスタキサンチンという色素が作りだしています。味に関してはエビを餌としたものと、イワシを餌としたものを数ヶ月後に食べ比べたところ、エビを食べて育ったマダイが格段においしいという実験結果が出ています。このように、マダイにとってエビは深い関係にあるのですね。

マダイの歴史

マダイは、各地の貝塚や遺跡などから骨が出土し昔から親しまれていたことがうかがえます。

室町時代ではマダイより鯉が優位であったが、江戸時代になると逆転し「人は武士、柱は檜の木、魚は鯛とよみおける。世の人の口における己がさまざまなる物好きはあれども、この魚もて調味の最上とせむに咎あるべからず。糸にかけて台にすえたる男振りさへ、外に似るべくもなし」(『百魚譜』)と讃辞され、『本朝食鑑』では「古より宗廟の祭に供う」とあるように最高の魚と位置づけられています。

また、将軍家への献上品にもタイを贈る習慣があり、大名の格により大きさが細かく決められていたともいわれています。

日本では、マダイは厄を遠のけ福を呼ぶとされ、現代でも神事や祝い膳に欠かせない存在になっています。