アワビの生態

クロアワビとエゾアワビは殻長14㎝前後になり、メガイアワビは殻長17㎝前後、マダカアワビは日本産のアワビでは最も大きくなり、殻長が25㎝を超えるものもいます。

アワビが棲むのに適した海水温は13〜25℃ですが、10〜30℃までの水温であれば生息できるといわれています。いずれも沿岸の岩礁に棲んでおり、夜行性のためにもっぱら日中は岩の下に隠れています。

海底のエゾアワビ

アワビは藻食性で、歯舌(しぜつ)と呼ばれるヤスリのような器官で海藻をこそげとって食べます。マダカアワビとメガイアワビはあまり動きませんが、クロアワビとエゾアワビは夜になると岩の表面に出て活発に動き回り、エサの海藻を求めて100m以上も移動することがあります。

アワビは雌雄が分かれていますが、雌雄の判別は外見からではほぼ不可能なため、身を少しめくったところにある生殖腺の色で見分けます。卵や精子を作る生殖腺は、産卵期になると肝(中腸腺=肝臓と膵臓の機能を合わせもった器官)のまわりを取り囲むように大きく発達します。この生殖腺の色が緑のものだと雌、白っぽいものだと雄で
す。

エゾアワビの産卵 呼水孔から卵を放出しています

アワビは環境の変化を感じて一斉に放卵放精することが知られており、水温が20℃前後になると産卵が最盛期を迎えます。クロアワビやマダカアワビ、メガイアワビの産卵期は秋から初冬で、10〜12月頃最盛期を迎えますが、寒いところに棲むエゾアワビは7〜11月が産卵の最盛期になります。

生み出される卵の量はアワビの体が大きいほど多く、百数十万粒もの卵を放出するそうです。丸い形をした緑色の卵は直径が0.2〜0.3㎜ととても小さく、産卵されるとばらばらになって海底に沈んでいきます。

受精してから8〜10時間ほどで孵化したアワビの幼生は、その体に生えた繊毛(せんもう)と呼ばれる細かい毛を使って海中を漂うプランクトン生活に移ります。

エゾアワビのベリジャー幼生
エゾアワビの稚貝

この幼生期には一重とはいえサザエのように殻が巻いており、また殻の口には蓋がついているなど、巻貝としての名残りが見られます。やがて5〜10日ほど経つと潮の通りがよい浅い岩礁に着き、稚貝として生活を始めます。

アワビは成長にともない深場へと移動していき、その寿命は17〜18年といわれています。成長の度合いは棲んでいる地域によって大きく異なりますが、一年で平均2〜3㎝成長します。クロアワビやエゾアワビは生後2年で殻長3〜5㎝、5年で6〜12㎝、マダカアワビやメガイアワビは生後2年で殻長7〜10㎝、5年で11〜15㎝になります。