ブリの由来

年取り魚(西日本側)

大晦日に、新たな一年を良いものでありますようにと祈念して食べる魚を、「年取り魚」といいます。その地方によって食べる魚は様々ですが、大きく分けると「東日本の塩鮭」「西日本の塩ブリ」となり、東西でブリの消費量ははっきりと差がでています。この食文化の境目は、糸魚川(いといがわ)と静岡を結ぶフォッサマグナ「大地溝帯」(だいちこうたい)と一致しますが、これは山岳地帯に阻まれた昔の地形が文化圏を分けたためだと考えられています。

年末のブリを、京都の魚屋では頭を上にして縦に並べますが、東京の魚屋では頭を左にして横に並べるなど、現在でも東西のブリ文化には違いが残っているのです。また、「ブリ」という名前の由来には、様々な説があります。まず、脂ののった身がとてもおいしいことから、「アブラ→ブラ→ブリ」と転化(てんか)したという説。「年老いた魚」の意から、「年経(ふ)りたる」のふりに濁音がついたとする説。また、漢字については、旧暦の師走の頃が旬なので、さかなへんに「師」をつけて読ませたとする説。「老魚・大魚」の総称である「魚師(うおし)」から、ふたつの文字を一文字にして読ませたとする説などです。

ブリの産卵

ブリは、2月から7月頃、おもに九州近海や東シナ海で産卵します。産卵期にはブリの動きは鈍くなり、水温19〜21℃あたりで盛んに産卵を行います。メスとオスが体をすり合わせ、逆立ちして放精放卵すると言われ、ブリ一腹の放卵数は、100〜150万粒です。

生み出された卵は沖合いの海中に浮き、二日あまりで孵化します。孵化した小魚は海の表面近くを泳ぎ、体長1cmくらいになると、海面に漂う流れ藻の下に集まって生活します。この稚魚が、「モジャコ」(藻雑魚)と言われるのはその習性のためなのです。このモジャコ、体全体が金色に輝く黄褐色で、10本ほどの赤褐色の線が走り、とても美しい姿をしています。藻の下でプランクトンなどを食べて育ちますが、共食いもするほどに食欲は旺盛です。ちなみに、ハマチやブリの養殖はこのモジャコを網ですくい、網いけすの中でイワシやイカナゴ、配合飼料をエサにして育てられ、半年くらいで出荷されるのです。

流れ藻にくっついたモジャコは、藻と共に暖流にのって北のほうに運ばれてゆき、10cmくらいになると、背中の方から青みがかって、ブリらしい姿になり、次第に藻から離れて内湾や沿岸域で群れをなして育ちます。そして、2、3年後に体長80cmくらいまで成長すると、大部分のものが夏季に北海道近海まで北上し、秋季に南下して産卵するようになるのです。

天然ぶりの成長は、1年で40cm、2年で60cm、3年で70cm、4年で80cmほどです。九州を中心とし、関東でも育てられている養殖ブリは成長も早く、5〜6月に養殖の種苗(しゅびょう)として大量に採取されたモジャコが、12月にはハマチとして出荷されます。ちなみに、食いっぷりが良く、よく育つハマチですが、一匹のハマチが1kg太るためには、なんと8kgのイワシが必要だと言われています。