呼び名の由来

北陸では35〜50㎝ほどの大きさの若いブリを「フクラギ」と呼びます。
ブリは成長にともなって名前が変わっていきますが、このような魚は「出世魚」と呼ばれます。
ボラやスズキも「出世魚」として知られていますね。
これらの魚は成長につれて風味が変わるために名前が変えられていたそうで、それに乗っかって縁起を担いだのが侍たちです。

例えば、皆さんがよく知る徳川家康。
幼いころは松平竹千代と呼ばれ、今川氏の人質となっていた時は松平元信から元康、その今川氏から独立すると松平家康になり、最後はご存知の通り徳川家康と5度も名前が変わりました。
家康に限らず他の侍も成長や出世にともなって名前を変えていたので、これらの魚は成長や出世を祝う場にはピッタリだったのでしょう。

ただ、これらの出世魚には各地方で独特の呼び名がつくため覚えるのが大変。

石川県と富山県ではコゾクラ→フクラギ→ガンド→ブリ、関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西ではツバス→ハマチ→メジロ→ブリと変わるようで、寿司屋で頼むのにも迷いそうです。
最後にはみんなブリに落ち着くのは救いでしょうか。

さて、そんなフクラギですが、その形と大きさが人間の「ふくらはぎ」に似ていることから、こう呼ばれるようになったと言われています。
たくさん獲れて港が賑わい福をもたらす魚として、富山では「福来魚」と当て字されることもあるそうです。

そういえば市場では同じサイズの若いブリでも天然物をフクラギ/イナダ、養殖物をハマチと呼んで区別することがあるそうで、ややこしさに拍車がかかりますね。

ちなみに各年代の語源ですが、コゾクラは「小僧っ子ら」から、ガンドは大工が使う丸頭鋸(ガンド)に似ているからとか、強盗(ガンドウ)提灯/龕灯(ガンドウ)と呼ばれる丸くて長い手提げ提灯に形や大きさが似ているからと言われています。

ブリの由来も「年を経りたる魚(年老いた魚)」の「ヘリ」が訛って「ブリ」になったとか、「アブラが多い魚だから略してブリ」だったりといろいろです。

『鰤』という字は日本で作られた国字。師走の頃に旬を迎えるからとか、年老いた魚や大きな魚の総称である「魚師(うおし)」の二文字を一文字にまとめたとか、こちらもいろいろな説があります。

フクラギは大きさが35〜60㎝ほどで、80㎝を超えるブリよりもだいぶ小さめですが、紡錘形の体や黄緑色を帯びた背側に銀白色の腹側、目から尾にかけて走る黄色い帯、V字型に大きく切れ込みのはいった尾ビレと体の特徴は変わりません。

ただ、成長にしたがって身に脂がのってくるため、ほっそりと引き締まったフクラギに対し、パンパンに膨らんだ風船のようなブリと見た目の印象はだいぶ変わります。