ホタルイカの産卵

ホタルイカをはじめ、イカの仲間は雌雄が分かれています。パッと見ると区別がつかないのですが、ある部分をよく見ると簡単に見分けられるようになります。

それはイカの腕。

イカは繁殖の際、雄が自分の体の中で精子を精莢(せいきょう)/精包(せいほう)という細長いカプセルに詰め、それを雌に手渡します。
その際に使われるのが交接腕と呼ばれる独特の形をした腕。
これが雌にはないため、ここで見分けられるのです。

イカの産卵は春から初夏にかけて行われます。雌の体の中で受精した卵は、ロートから細長い寒天のようなものに包まれて生み出され、バラバラになって海中を漂います。

一度に生み出される卵の数は2000個ほど。1匹の雌は産卵期の間に5回に渡って卵を生み出すため、合わせて1万個ほどの卵を生んでいると推測されています。卵はだ円形で長さが1.5㎜、幅が1.2㎜くらい。2週間ほどで卵からかえり、産まれたばかりは胴の長さが1.4㎜くらいです。

ホタルイカ群遊海面

富山県滑川市の海域では、産卵期を迎えたホタルイカの雌は陽が沈む頃になると深海から浮かび上がって岸の近くへ寄ってきます。これが国の特別天然記念物に指定されている「ホタルイカ群遊海面」という現象です。そして夜中に産卵し、明るくなると岸から離れて深海に戻るという行動を繰り返します。生み出された卵は水深100mより浅いところを漂いますが、対馬暖流にのって山形県のあたりまで運ばれてふ化するものもあるそうです。

卵からかえった子供のホタルイカは水深50~125mの間を、夜は浅いところ、昼は深いところを移動します。このような水深の移動を浅深移動と言います。この浅深移動を続けながら、10~12月にかけて富山湾に近づいてきます。1月にはたくさんのホタルイカが富山湾入りをし、交接と産卵の時を待ちます。
こうしてホタルイカは命をつなぐサイクルを続けていくのです。