ホタルイカの味覚

茹でたホタルイカのワタには強い旨味とほのかな苦味があり、また程よく弾力がありつつも柔らかい身はほんのりと甘く、酢味噌や醤油などをつけなくてもとても美味しい食材です。噛んだ時のぷつりとした歯ごたえの後に広がる味はたまりません。酢の物にしても煮物や天ぷらにしても美味しさが楽しめます。

ホタルイカの煮干しもまた味わい深いもの。干されて味がぎゅっと凝縮したホタルイカをそのまま噛むのも良いですが、軽く炙るとこれがさらに美味しくなります。とろりとしたワタの強烈な旨味が身に絡んで手が止まらなくなります。こんなに美味しいホタルイカですが、注意してもらいたいことが一つあります。

それは生で食べること。

ホタルイカの内臓には、旋尾線虫という寄生虫の幼虫が寄生していることがあります。ホタルイカの最大7%にこの寄生虫が寄生していると言われているのですが、割合を見るとあまり大したことはないなと思われるかもしれません。ホタルイカ100匹のうち多くても7匹にしかいないということですから。

ただ、この旋尾線虫は有名なアニサキスよりも深刻な被害を人間の体にもたらします。腸に潜り込んで腸閉塞を引き起こすほか、腹や背中、腰などの皮ふの下を動き回りミミズ腫れを作るのです。しっかり火を通せば何の問題もなくなりますが、刺身や沖漬けといった生で食べる場合は-30℃以下で数日冷凍するか、内臓を取り除かなければなりません。しゃぶしゃぶで食べる時も30秒以上湯にくぐらせて、しっかりと火を通しましょう。

店頭で売られているものについては、平成12年(2000年)に厚生省が都道府県に対処法と製品について処理したことを表示するように通達したため、おおよそ安心して食べることができます。ただ自分で刺身や沖漬けを作ったり、今はほとんどないでしょうが料理店で踊り食いが出てきた時は十分注意してください。