サンマの産卵

サンマの産卵は、秋から初夏に比較的盛んに行われますが、基本的に年中行われています。産卵場所も季節によって変わり、冬には黒潮域で、春や秋には親潮と黒潮が混ざり合う海域で産卵が行われています。また、日本の沿岸だけではなく、はるか沖合の海でも行われていることが最近わかってきました。

サンマの卵は、海水魚の卵の中では大きい方で、1.7〜2.2mmほどのだ円形。サンマは1回に1千〜4千個の卵を数日おきに産みますが、一生の間に全部で何個産むのかははっきりわかっていません。長い間産卵するので、生まれる時期も様々です。こうしたふ化した時期の違いは、その後の成長の速さや卵を産むまでの期間に影響していると考えられています。

ふ化するまでの時間は、海水温が20℃前後では約10日。15℃前後では約17日と海水温が高いほど早くふ化します。ふ化直後の体長は7mmほど。体長4cmぐらいから遊泳力が増し、体形も成魚と同様になり、6ヶ月ほどで約20cmに成長します。

光で群れを操る漁法

サンマは、光に集まる習性があります。これを利用した漁法が漁灯(LEDライト)を使う棒受け網漁法です。

日没後から明け方まで行われる棒受け網漁法は、サンマの群を見つけたら船の両側の漁灯を灯し、群を引き寄せます。魚群に近づいたところで左側の漁灯を消し、右側の漁灯だけ灯してサンマを右側に誘導します。その間に左側で網を沈め捕獲の準備をします。

STEP
1

準備ができたら右側の漁灯を後ろから順番に消し、左側の漁灯を前から点灯してサンマを網の中へ誘い込みます。

STEP
2

網の中に集まったサンマを赤色灯で落ち着かせ、網の中で旋回群泳したところ網をたぐり寄せ、フィッシュポンプなどを使って吸い取ります。
(注:網が右舷にあるか左舷にあるかは地域によって異なるようです。大型のサンマ漁船では多くが右舷側に網があるようですが、紀州の船は逆の物が多いようです。)

STEP
3

サンマの回遊

沖合性のサンマは、水深20mよりも浅い表層部に生息しています。サンマの分布域は、日本海、オホーツク海、北太平洋の亜熱帯水域から亜寒帯水域と広い海域に分布しています。日本近海では、千島(ちしま)列島から沖縄付近まで生息し、北西太平洋系と日本海系に大別されます。

生息水域は10~20℃に多く、北西太平洋系では、海水温の上昇により春に黒潮海流にのって北上し、黒潮と親潮が混ざる混合域で豊富な動物プランクトンを盛んに摂食します。その後親潮域に入り脂をたっぷり蓄えたサンマは、親潮海域の海水温が下がる頃から、産卵と越冬のため南下を始めます。

冷たい親潮海域で脂肪を蓄え、豊富な動物プランクトンを摂食し、まるまると太った脂肪含有量が最も多いサンマが漁獲されるのが8月から9月頃。この頃に獲れるサンマが人気が高いのです。日本海側では、春に対馬海流にのって北上、秋に南下し、初冬には九州沿岸にあらわれるようです。

サンマの名前の由来・地方名

「秋刀魚」の漢字の由来は、秋に獲れる代表的な魚で、色や形が刀に似ているところから現在の字に定着したといわれています。また、魚体が細長いことから「狭真魚(さまな)」と呼ばれ、転訛して「サンマ」といわれる説もあります。

明治の文豪、夏目漱石の「吾輩は猫である」の文中には「三馬」と書かれていますが、その後大正10年の佐藤春夫の「秋刀魚の歌」には現在の「秋刀魚」という漢字が使われています。昔、京都ではサヨリとサンマを混合していたこともあったようです。

地方名
  • ハンジョ(新潟)
    …豊漁を祈る「万生(ばんせい)」から。
  • サイリ・サイレ(西日本各地)
    …大漁祈願の供え物である「祭魚(サイラ)」から。
  • サザ(九州)
    …細小、狭小など細かく小さいという意味から。
  • カド(三重)
    …米を炊くときの混ぜ物「糅(かて)」から、大漁の魚をさす。