サザエの味覚

さて、サザエといえば刺身など生で食べる足身のコリコリとした食感が美味しいのですが、つぼ焼にしたり煮たりして火を通しても弾力のある歯ごたえがとても素晴らしい食材です。

そういえば、足身としっぽの間にある内臓(ワタ)を食べると、口の中がジャリジャリすることがよくあります。「砂地に棲むサザエだから砂が入ってるんだ」と言われることがありますが、実はこれはサンゴ藻という硬い海藻のかけら。サザエが食べたサンゴ藻が消化管(俗に砂袋ということもあります)の中に残っているので、まるで砂を噛んだようになるのです。まあ、サザエに何日かエサをやらずに水中においておけばそのかけらが糞として出されてしまうので口当たりが良くなりますが、もともとサザエの内臓は苦くてあまり美味しくないのでそこまでして食べなくてもよいと思います。

ついでにサザエをつぼ焼などで丸ごと美味しく食べるコツは、足身の後ろ側についている外套膜(がいとうまく)を取ること。このスカートのように薄くひらひらとしている部分はハカマとも言われますが、これも食べると苦いので内臓と一緒に取り除いてしまうほうがよいでしょう。

さて、サザエがこのように硬いエサまで食べてしまえる秘密は、歯舌(しぜつ)と呼ばれる部分にあります。この歯舌は足身の間に埋まっていて、幅1㎜ほど、長さ4㎝ほどの白くて細長く硬い器官です。足身を食べると、簡単に見つけることができます。これで海藻にヤスリをかけるように削りとって食べるのです。

素潜り漁をする輪島市海士町の海女(古谷千佳子氏撮影)

このようなエサの食べ方をしているサザエには二枚貝と違ってあまり食中毒の危険がありません。とは言え、冷蔵庫などで保管していても死んでしまったものは鮮度が落ちてしまうのでご注意ください。

最後に、サザエは各地で漁協により盛んに放流されていますが、その放流されたサザエを勝手に獲らないようにお願いします。漁師の生活を守り、美味しいサザエが食べ続けられるよう、法律を守りましょう。