ズワイガニの歴史

ズワイガニ漁は室町時代後期頃から行われていたようで、その頃京都に住んでいた公家の三条西実隆の日記『実隆公記』に「伯少将送越前蟹一折(伯少将が越前ガニを一折送ってくれました)」という記述があり、越前でズワイガニが水揚げされていたことをうかがわせます。ちなみにズワイガニという名前は、江戸時代中期に書かれた『越前国福井領産物』に添え書きとして初めて登場します。

また、福井県越前町四ケ浦で穫れた越前ガニが明治42年に皇室に献上され全国的に有名になったことから、越前ガニはズワイガニのブランド化の先駆けとなりました。芥川龍之介が詠んだ句「秋風や甲羅をあます膳の蟹」の詞書には「室生犀星金沢の蟹を贈る」とあり、芥川と親交があった室生犀星が贈ったズワイガニのことだと言われています。

ズワイガニの生態

ズワイガニは雄と雌とで大きさが極端に違います。雄は甲幅15cm、脚を左右に広げると70〜80cmに達しますが、雌は甲幅が7〜8cmで雄の約半分、脚を広げても30cmに届きません。

水深200〜1,170mの砂泥底に生息しており、特に水深200〜400mの大陸棚縁辺部に群れをつくって生息しています。生息に適した温度は5℃以下であり、水温が17℃以上になると生存できなくなってしまいます。

ゾエア幼生

寿命は約15年。ただし、雌が成熟して交尾が行える成体になるまで9年近くかかります。雌は成体になると脱皮しなくなり、1〜2年周期で産卵と孵化を行います。産卵期は初産ガニと経産ガニで異なり、初産ガニは夏、経産ガニは冬から春に産卵します。卵は直径約1mm前後で、生み出されると一粒一粒「てんらく糸」という糸状のもので雌の腹節の中にある腹肢と繋がって塊状になります。この雌が抱える卵の数は1万〜13万粒もあり、初産ガニで約1年半、経産ガニで約1年の間、腹節に抱えて大事に保護し続けるのです。

メガロパ幼生

卵が孵化する時期は秋から春で、能登半島周辺では3月に幼生が多く見られます。孵化したズワイガニの幼生は、孵化水深に滞留する「プレゾエア幼生」から水深50m以浅に集まる「第Ⅰ期ゾエア幼生」、水深200m以浅に集まる「第Ⅱ期ゾエア幼生」、さらに水深200m以深、水温6〜7℃以下の層に多く集まる「メガロパ幼生」へと順に変態し、3ヶ月前後の間、浮遊幼生期を送ります。

その後、稚ガニに変態するとともに水深300〜400mの海底で底生生活へと移行し、脱皮を繰り返しながら成体へと成長していきます。ズワイガニは肉食性で、浮遊幼生期は動物プランクトンを食べています。稚ガニになり底生生活に移った後は、クモヒトデ類や二枚貝類、エビなどの小型甲殻類の他、ゴカイなどの多毛類や魚類、タコなど頭足類も餌としているようです。飼育実験の場合、自分の脱皮した殻を食べている様子が観察されています。

稚ガニ