ガスエビの味覚

種類によって違う旬

9月から翌年の6月にかけて、底びき網漁で甘エビなどに混じって獲られます。一般には体が細めのトゲザコエビに比べて大ぶりなクロザコエビの方が美味しいとされ、高値で取り引きされています。産地の店頭で「刺身用ガスエビ」として手頃な値段で売っているのは、だいたいトゲザコエビだと思います。3月から5月頃になると店頭ではよく見かけるので、この辺りが旬になるのでしょうか。9月頃から見かけるのは、クロザコエビ。

ガスエビの味自体は12月から翌年3月くらいの間が美味しいとされています。昔からガスエビは「鮮度が落ちやすいので、産地でしか味わえない〝幻のエビ〟」と言われています。とは言っても近年は流通や冷凍・冷蔵技術が発達したため、鮮度に関してはかなりハードルが下がっています。それなのに何故、大都市圏などに出回らないかというと、ガスエビ類の漁獲量が少ないのです。

石川県では甘エビの水揚げはおよそ800〜900トンほど。それに対し、ガスエビの中でも最も水揚げが多いトゲザコエビでも100トン未満しかありません。大都市圏での知名度は未だ「知るひとぞ知る」という感じですが、いつかノドグロのように有名になることはあるでしょうか。

エビによって「甘い」が違う

 ※「グルタミン」と「グルタミン酸」は、どちらもアミノ酸の一種です。
よく似ている名前ですが、違うものです。

近年では「甘エビより甘くて美味しい」などのキャッチフレーズで売り出されているガスエビ。もちろん甘いのは間違いないのですが、成分を分析すると甘エビとは甘さの質が違うことがわかります。

まずクロザコエビは甘味を感じさせるグルタミンとアラニン、弱い苦味をコクとして感じさせるアルギニンを多く含んでいます。一方、甘エビは甘みを感じさせるアスパラギンとグリシン、アラニンに加え、旨味を感じさせるグルタミン酸を多く含んでいます。

ちなみに、アルギニンはカニの仲間が多く含んでいるアミノ酸。ガスエビが「生で食べるとエビの味、火を通すとカニみたいな味」と言われるのは、このアルギニンが関係しているのかもしれません。

他にクロザコエビは動脈硬化の改善作用があるといわれるDPA(ドコサペンタエン酸)や、疲労回復に役立つタウリンを甘エビの3~4倍も含んでいるそうです。