味覚・目利き

各地での旬の時期

アカムツの開き

アカムツといえば「白身のトロ」と言われるほど身に脂がたっぷりとのった魚。その体脂肪は20%を超えますがくどさはなく、上品な甘味と濃厚な旨味を持っています。刺身や寿司、しゃぶしゃぶ、焼魚や干物、煮物にしても脂の旨みが味わえます。そんなアカムツの旬はいつ頃なのでしょう。実はこれにはいろいろな説があり、地域によって時期が違っています。

まず新潟県では産卵期に入る7月から終わる前の9月ごろまでの夏から初秋を旬としています。産卵のためにエサをたくさん食べることで脂がよく乗り、美味しくなるという説です。次に山陰地方では9月から12月、秋から冬にかけてが旬とされています。この地域では夏を過ぎる頃から中型や大型のアカムツが水揚げされますが、大きいものほど脂がよく乗っているため美味しくなるという説です。特に島根県では、この時期に獲れるアカムツを「どんちっちノドグロ」という名称でブランド化するほど。

アカムツの釜飯

さて、それでは能登半島がある石川県ではいつが旬とされているのでしょう。それは11月から2月、晩秋から冬にかけてと言われています。寒さに耐えるために脂を蓄えると考えられていることがその理由です。

本当は旬がない?

どの地域でも脂の乗りが一番良い頃が旬とされているわけですが、2007年に島根県水産技術センターが5年間にわたってアカムツの脂の乗りを調査したところ、下記の結論が出されました。

①小さなものより大きなものの方が脂の乗りが良い
②脂の乗りは季節による変化よりも1匹ごとの違いの方が大きい
③見た目では脂の乗りは判断できない

アカムツのカルパッチョ

つまり、アカムツは脂ののりに限って言えば「いつでも旬」というわけです。刺身や寿司、干物なら季節に関係なく美味しいのですから嬉しい話ですね。まあ、子持ちのアカムツを食べたいなら夏から秋ということになりますが。ちなみに同じく島根県水産技術センターの研究によれば、アカムツの脂は食べているエサの種類や量によって違い、海域によってその味わいが異なるそうです。季節による旬よりも、獲られた場所による味の違いの方が楽しめるかもしれませんね。

ちなみに同じく島根県水産技術センターの研究によれば、アカムツの脂は食べているエサの種類や量によって違い、海域によってその味わいが異なるそうです。季節による旬よりも、獲られた場所による味の違いの方が楽しめるかもしれませんね。

アカムツの選び方

鮮魚を選ぶ時は、まず目を見ましょう。澄んでいて綺麗な目をしていれば新鮮です。アカムツの目は大きいですから、わかりやすいですね。触った身が固く締まって張りがあるのも鮮度が良い証拠ですが、触る時はできればお店の人に許可を得てからにしましょう。

また、一般に魚は色や模様の鮮やかなものを選ぶと良いとされていますが、島根県では延縄漁などで獲られ色やツヤがはっきりしたアカムツよりも、底びき網で獲られてところどころウロコが剥がれて白っぽく見えるものの方が美味しいとされています。泥底に棲んでいるアカムツの方がエサをたっぷり食べて脂が乗っているのが理由だそうですが、前述したように「見た目では脂の乗りは判断できない」のがアカムツ。あくまでもご参考までに、ということです。