形態・生態と漁獲

アカムツが赤い理由

輪島港で水揚げされたノドグロ

大きいものでは体長が40cmほどになります。名前に「ムツ」がついてはいても、ムツやクロムツとは胸ビレや尾ビレなどのヒレの形、横から見た体型が全く違います。ウロコは薄くて柔らかいのですが、櫛鱗(しつりん)といって縁にギザギザの小さなトゲがあるため触るとザラザラしています。また「ノドグロ」と呼ばれるように口の中が黒くなっています。左右に平たい体と大きな目、そして名前の通り赤い色の体が特徴。背中側は赤橙色、腹側は淡い銀白色をしています。

そういえば、深い海に棲んでいて身に脂がよく乗っている高級魚で思い浮かぶのはキンメダイ。なぜアカムツもキンメダイも赤い体なのでしょう。これには色の見え方が関係しています。実は私たちが見ている色は、ものが光を反射した色なのです。そのため、私たちは光のない真っ暗なところでは色を見ることができませんし、月明かりのような弱い光では色がはっきりわかりません。つまり地上でアカムツの体が赤く見えるのは、その体が赤い光を強く反射するからということです。

そして、このことは海が青く見えることにも関係があります。太陽の光をガラスのプリズムに通すと7つの色に分かれるのはよく知られていますね。その色のうち、赤や橙・黄色は浅いところで海に吸収されてしまい、深い場所に届くのは青や藍色の光だけになります。そうするとアカムツがいくら赤い体の色をしていても反射する赤い光がないので、彼らが棲んでいる場所では灰色のようなはっきりしない色に見えます。

人間が無理やり釣り上げるために赤い色がよく目立つだけで、彼らにとっては外敵から身を守る立派な保護色なのです。ちなみに喉の奥が黒い理由はわかっていません。エサに気づかれにくくするためや敵に見つからないようにするためなどいくつかの説がありますが、どれもはっきりした根拠がないのです。

雌のほうが長生き

水深100~200mほどの砂や泥の海底に棲んでいて、大きな口と小さくて鋭い歯で主に小魚やエビ・カニなどの甲殻類の他にイカなどをエサにしています。産卵は6月から10月にかけて深い場所で行われ、9月ごろがピークとされています。

アカムツはマグロのような回遊魚ではないのであまり広い範囲を移動することはないようですが、成長にともなって棲んでいる深さが変わります。水深100m前後ではほとんどが幼魚や若魚で、大きくなるにつれて深い場所へと移っていきます。寿命は雄が5年ほど、雌は10年ほど。1年で10cm、2年で16cm前後、3年で22cm前後に育ち、40cm前後の大きな体になるには10年ほどかかると言われています。

いつかお手頃になるかも?

アカムツは海が時化(しけ)る冬季には少なくなりますが、一年を通じて漁獲があります。主に底びき網や刺網、延縄(はえなわ)漁で獲られますが、2013年、富山県水産研究所などが人工授精で生まれた仔魚の育成に成功しました。その後、2017年には体長約5cmほどの稚魚5.5万匹が放流されるなど栽培漁業に向けての研究が本格的に行われています。ひょっとしたら近い将来、お手頃な値段でアカムツを味わえるようになるかもしれませんね。